2011.10.01
vol.57 黄色いフリージア

黄色いフリージアの花を見ると日本でフラワーアレンジのレッスンを始めた日の記憶が蘇る。
日本の雑誌で紹介されたリバティデパートでのフラワーショーの記事を見たお花屋さんの男性スタッフが習いに来てくれたのだった。渡英前から教えていた、テキスタイルフラワーのスタジオで女性に混じって彼はフリージアのコサージュを器用そうに仕上げた。
冬のロンドンの露天のフラワーショップの最前列に必ずフリージアがあった。冷たい風に吹かれながら負けずに蕾を膨らませる姿はともすればくじけそうになる私の心を何度も励ましてくれた。
日本に戻って英国で学んだフラワーアレンジのスクールをスタートする時はこの花を最初に使おうと決めていた。もうひとつ心に決めていたことがあった。それは恩師のMiss.Englishから贈られた言葉を守り伝えていくことだった。日本だと考えられないお名前だがこれは恩師の本名だった。
フラワースクールの卒業式の後みんなでパブに行った。十代の同級生はコーラやオレンジジュースを飲んでいたが私たちはギネスで乾杯した。誰かにご馳走したりしてもらったり。その賑やかな中で恩師は声をかけてくださった。
「あなたが日本に戻って花の仕事をして何か私を必要とするときはいつでも力になるから言ってきてね。」
その言葉のとおり「スタッフをイギリスのフラワーショップで研修させてあげたい」とお願いしたときは王室御用達のお花屋さんを紹介してくださった。
その後ロンドンのフォーシーズンホテルのフラワーショップで責任者をしておられて渡英するたびにお伺いした。その時々ロンドンで流行っている花の情報を聞かせてくださった。数年前のベッカムの結婚式の時はこの雑誌にブーケが出ているという事まで教えてくださった。
何かを強いたりすることは一切無く必要な時に力になって下さる。私は自分もそんなスタンスでスクールを展開したいとずっと願っていた。様々な事情でお目にかかれなくなってしまった方もいらっしゃるけれどその方たちにお伝えしたい。
「花のことであなたがわたしを必要とするときはいつでも力になりたいと思っていますよ!」
Miss.Englishがいつもそう言い続けて見守ってくださってきたように。