2011.01.01
vol.54 幸せの青い鳥

新年明けましておめでとうございます。

皆様お元気で新しい年をお迎えになられたことと思います。今年もよろしくお願い致します。

私たちは日ごろ偶然だと思うことが多くあります。それらは心理学者ユングの言葉では「シンクロニシティ」と言うそうです。共時性と訳されますが日常生活の中の小さな奇跡と言われています。
大切に飾ってあるガラスの青い鳥を見るたびにこの言葉を思い出します。いくつかのシンクロニシティのおかげでこの鳥は私の元にやってきてくれたのです。最初のシンクロニシティは28年前のこと。

商社のギャラリーをお借りしてテキスタイルフラワーの作品展を行ったときのことでした。芳名録に残されたサインに私は驚愕しました。大好きだった恩師とそっくりの筆跡で同じ住所・苗字のサインが残されていたのです。違うのは名前だけ。恩師はすでにお亡くなりになっているのに……どなただろう?お尋ねすると恩師のお嬢様だということがわかりました。色白の肌と美しい横顔はお母様譲りでした。その商社の社長秘書をなさっていたのです。

2回目のシンクロニシティは昨年の秋のこと。友人が恩師のご自宅に行かれるということでご一緒させていただきました。いつかご主人と恩師である奥様のことをお話したいとずっと思っていたのです。
先生はいつも私の花のイベントに来て下さってその度にガラスの鳥をプレゼントしてくださったのです。「こういったとき本当は食べるものをお持ちするのが良いかと思うのですが私はやすこさんに残るものをお渡ししたいと思って…」
そのお話をご主人にさせていただくとその時期すでに先生は癌宣告をされておられたことがわかりました。話し終えて何気なくサイドボードに目をやると私がいただいたのと同じガラスの青い鳥が飾られていたのです。「この鳥です!私がいつも先生に頂いていたのは!」と申し上げるとご主人はすぐに「あなたにこの鳥を差し上げましょう。お持ち帰りなさい」と仰いました。

我が家の一員になった青い鳥はいつもやさしい微笑を浮かべています。その笑顔は大好きな恩師の素敵な姿と重なり私を幸せにしてくれます。幸せの青い鳥は私の日常を見守ってくれているのです。

半世紀以上の時の流れを経て我が家にやってきてくれた小鳥。このシンクロニシティには恩師のお取り計らいがどこかにあった気がしてなりません。

日英フラワーアレンジメント協会チェアーパースン かわべやすこ