JEFASとは?

新年明けましておめでとうございます。

皆様お元気で新しい年をお迎えになられたことと思います。今年もよろしくお願い致します。

私たちは日ごろ偶然だと思うことが多くあります。それらは心理学者ユングの言葉では「シンクロニシティ」と言うそうです。共時性と訳されますが日常生活の中の小さな奇跡と言われています。
大切に飾ってあるガラスの青い鳥を見るたびにこの言葉を思い出します。いくつかのシンクロニシティのおかげでこの鳥は私の元にやってきてくれたのです。最初のシンクロニシティは28年前のこと。

商社のギャラリーをお借りしてテキスタイルフラワーの作品展を行ったときのことでした。芳名録に残されたサインに私は驚愕しました。大好きだった恩師とそっくりの筆跡で同じ住所・苗字のサインが残されていたのです。違うのは名前だけ。恩師はすでにお亡くなりになっているのに……どなただろう?お尋ねすると恩師のお嬢様だということがわかりました。色白の肌と美しい横顔はお母様譲りでした。その商社の社長秘書をなさっていたのです。

2回目のシンクロニシティは昨年の秋のこと。友人が恩師のご自宅に行かれるということでご一緒させていただきました。いつかご主人と恩師である奥様のことをお話したいとずっと思っていたのです。
先生はいつも私の花のイベントに来て下さってその度にガラスの鳥をプレゼントしてくださったのです。「こういったとき本当は食べるものをお持ちするのが良いかと思うのですが私はやすこさんに残るものをお渡ししたいと思って…」
そのお話をご主人にさせていただくとその時期すでに先生は癌宣告をされておられたことがわかりました。話し終えて何気なくサイドボードに目をやると私がいただいたのと同じガラスの青い鳥が飾られていたのです。「この鳥です!私がいつも先生に頂いていたのは!」と申し上げるとご主人はすぐに「あなたにこの鳥を差し上げましょう。お持ち帰りなさい」と仰いました。

我が家の一員になった青い鳥はいつもやさしい微笑を浮かべています。その笑顔は大好きな恩師の素敵な姿と重なり私を幸せにしてくれます。幸せの青い鳥は私の日常を見守ってくれているのです。

半世紀以上の時の流れを経て我が家にやってきてくれた小鳥。このシンクロニシティには恩師のお取り計らいがどこかにあった気がしてなりません。

日英フラワーアレンジメント協会チェアーパースン かわべやすこ

街路樹が色づき時々思いがけず冷たい風が吹き込む。そんな時に私はロンドンからウィンブルドンに下宿を移した。さすがにウィンブルドンは高級住宅地。素晴らしい邸宅が並び私の下宿もそんな一角にあった。

「これはあなたのナプキンリング」とオレンジの花の描かれているナプキンリングをランドレディ(下宿のマダム)のジルから渡された時は感激した。部屋は壁紙からランプシェードまでローラ・アシュレイでまとめられていた。

 下宿から学校に通うことにもやっと慣れた頃、駅前にマクドナルドがオープンした。今までこの地では殆ど見たことが無かった黒人や有色人種の若者が多くその店に集って来ていた。

 夕食の後、ジルと英国人の下宿の学生たちがマクドナルドの話をしだした。ウィンブルドンの雰囲気がたった一軒の店が出来たことでずいぶん変わったと言う内容だった。その中でただ一人の黄色人種である私は会話に入ることが出来なかった。それを察してかジルが「私たちの会話わかる?」と話しかけてきた。「わかる!私も同じ有色人種。黄色人種だよ。」とさりげなく言った。彼女は突然私の袖口を引き上げ、その腕を指して「ほらあなたの肌は白い!」そして自分の腕を指して「私も白いでしょう!」と言った。彼女の強い口調がずっと耳の奥に残った。その時私の脳裏に昼間の学校でのことが浮かんだ。

 その日の授業では自由に花を選んで好きな色の花でアレンジをするレッスンだった。迷っている私に先生が「 どの花を選んでも花はすべて同じに美しいよ。」と話しかけてくれたのだった。花の世界はこのように平等で何の差別も無いのに進化を続けた私たちの世界に多くの差別があることが不思議に思えた。あの時の心の翳りを毎年この季節になると思い出す。ウィンブルドンの美しい街の景色と共に。

日英フラワーアレンジメント協会チェアーパースン かわべやすこ

いよいよ本格的な夏が訪れようとしています。
京都の春と秋があまりにも素敵なので厳しい夏と冬に耐えられると言われていますがこの地に暮らしているとその通りだと思います。又、充実した春を過ごすとその年の夏は快適に過ごせるような気がします。

今春松本でのイベントは今夏を快適にしてくれる素晴らしい内容になりました。このイベントは、昨年ルドーテの本を頂いた時からスタートしたと言うことができるでしょう。その本には3月に松本美術館で行われるルドーテ展のことが書かれていました。

ルドーテの作品を花仲間に見ていただくチャンスだと松本の石川るみさんにイベントの企画をお願いいたしました。「松本市制100周年記念に100人集めてイベントをします。」と言いながら120名も集めてしまうパワフルな彼女は二つ返事で承諾してくれ難関である松本美術館の予約もあっという間に取ってくれました。全国からお集まりいただいたメンバーと楽しい時間を共有してイベントが終わった翌日、るみさんに「次回のイベントの候補場所に付き合ってください」と誘われました。もう次のイベントを考えている彼女のパワーに驚愕しました。

そこでは思いがけない出会いがありました。「森のおうち・絵本美術館」には 年前に出版した私の著書「英国風ウェディングの花」が飾られていました。ここではブライダルもされているそうで「その時参考にさせていただいているのですよ!」というスタッフの言葉に感激しました。

あれから3ヶ月も過ぎたのにあの時のお一人お一人の笑顔を思い出すと幸せな気持ちが溢れます。司馬遼太郎氏はこうおっしゃっています。

「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」みな同じような言葉である。もともと同じ根から出ているのである。しかし本能ではない。だから私たちは訓練してそれらを身に付けないといけないのである。あの時の花仲間は訓練をつんであのやさしさを身に付けられたのに違いない。スタッフ同士がお互いを思いやって少しでも、るみさんの負担を軽くするよう何度も話し合いを重ねておられる姿を見て確信しました。

そんなシーンをイベントの間中ずっと拝見することが出来たので幸せな気持ちが持続するのでしょう。この想いを大切に京都のこれからの暑い夏を乗り切ろうと思います。

松本の皆様本当にお世話になり有難うございました。

日英フラワーアレンジメント協会チェアーパースン かわべやすこ